2005 春 新作Gabbehの織り姫たち
▲1歳の男の子のお母さんであるTAIEBEH(タイエベ)さんは18歳。大好きな色は「赤」だとはにかんで答えた。
 2005年2月上旬。雪をかぶったザクロス山脈の峰々を見ながら、4WDに揺られて5時間。いくつもの高い峠を越えて、イランの遊牧民カシュガイ族の冬の避寒地を訪ねた。ひとつのオアシスを中心に4〜5個のテントが並び、厳しい寒さの中で身を寄せ合うように暮らすカシュガイの人々。乾燥と風に強い低潅木がわずかに生えるだけの荒涼とした景色の中で、目に飛び込んでくる色は、女性の織る絨緞と女性の着ている服だけ。
 イラン政府が進める定住化政策もあり、今では厳しい遊牧の生活を避けて、小麦を主にした農業をやりながら、細々と羊を追い、村に定住するカシュガイの人々も増えてきている。しかし、今回会った織り手たちは、男は羊を追い、女はギャッベを織るという何百年と続く生活を誇り高く守っている人々であった。

生活の中にある手織り

 カシュガイの女性たちが織っているのは絨緞だけではない。テントの中の家財道具を覆っている「ジャジム」も、左の写真の女性が小麦粉をこね、ナンを作るときに使っていた「ソマック」も、彼女たちの手織りの布。家族が毎日使うものだからこそ、好きな模様をていねいに織り込んでいく。遊牧の生活の中では、絨毯や布は実に合理的で持ち運び便利な家財道具、そして、家族に愛情を伝える絆の品である。


▲45歳のBAKHTAR(バクタル)さんが一番好きな時間は、ご主人がそばにいて、おしゃべりしながらギャッベを織る時間。好きな模様は「生命の樹」だと言う。
伝承の模様「生命の樹」
今回の訪問で何人もの女性に、テントの中に財産としてもっている家族の絨緞を見せてもらった。彼女たちが好きな文様は自然がテーマ。樹であり、鳥であり、花である。そして、それを抽象化したデザインが私たちがモダンと感じる現代のギャッベである。
 その中でも「生命の樹」は誰もが愛する永遠のテーマ。遊牧の民の生命線である「水」あるところに根づき、天空と交信する樹は、尊い命そのものである。

アマレ
タテ186×ヨコ118cm
カシュクリ
タテ168×ヨコ112cm

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