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ギャッベ
 
  ザクロス山脈の南、ペルシャ湾岸に近いカシュガイ族の人々の冬場のキャンプ地を訪ね歩いた。遊牧民を現地ではアシャエルと呼ぶ。そのアシャエルの中でも、今も伝統的なテント暮らしをし、羊を飼い、ギャッベを織りながら、荒涼たる原野を歩く遊牧生活を続けるクーチロー(野を歩く人)のテントを泊り歩いた。
雨の少ないこの地方の春の訪れは、つつましやかだ。地面をうっすらと緑の草がおおい、デイジーのような白い花が原野を飾る。
 カシュガイの女性たちはたくましい生命力を持っている。夜の明け切らぬ間にヤギの乳をしぼり、家族のための朝食を整える。「カシュガイの女は世界で一番の働き者」だと自ら言う。羊飼いの男たちを野に送りだすと、休む間もなく少量の水で手際よく食器を洗う。水場は遠く、水はたいへん貴重である。ヤギの乳でカシュケと呼ばれるチーズを作り、天日干しにして保存加工もする。行く先々で、ヤギ肉のケバブをふるまってくれるのだが、実は、彼ら自身は結婚式のお祝いの時くらいしか、肉は食べないそうだ。普段は、主食のナンと自家製のヨーグルト、ミントなどのハーブ類をサラダ感覚で食べる。これに豆類の煮込みが加わる昼食が一日の内で最もボリュームのある食事である。
 カシュガイの女性にとって、最も楽しい時間はギャッベを織っている時だと言う。一心不乱に手先を動かして、自分の心の中に沸き上がる情景を、色彩豊かにギャッベの中に織り込んでいく。最も豊かな表情を見せる瞬間である。(取材/向村・片岡・松尾)
荒々しいザクロスの山には、色彩の美しい民族服がよく似合う。
 

カシュクリ族のテントで実際に使われているギャッベ。地面に直接敷いて使うので厚く織ってある。

 
カシュクリ族の羊飼いの少年。200頭近いヤギと羊を一人で世話する。
 
客人をもてなす、ヤギ肉のケバブ、脂身のない赤い肉をしっかりと焼き上げる。
 

毎日、少しのたきぎで効率良く薄いナンを焼き上げる。手際の良さに見とれる。

 
春の夕日を背に、織り上がったばかりのゾランバリー氏注文のギャッベを広げ、仕上がり状態を語る。
 
夜明けと共に山に向かう羊飼い。昔ながらのフエルトの防寒具を身に着けている。
 

冬場のキャンプは北風を避けるために、山かげに風雨を避けるように張られる。

 
町に住むカシュガイの家族。機会を見つけては平原にテントを張り、野を歩いていた当時の伝統文化を伝えていく。